閉山期の富士山になぜ登るのか?

【富士山閉山期】滑落死亡事故に市長「考え方がずるい」──救助費用自己負担めぐりXが揺れた | ヤマファイル

【富士山閉山期】滑落死亡事故に市長「考え方がずるい」
──救助費用自己負担めぐりXが揺れた

2026年4月、閉山中の富士山で滑落事故が相次ぎ、30代の日本人男性が死亡した。富士宮市の須藤市長が「考え方がずるい」と怒りのコメントを発表し、Xで大きな反響を呼んだ。救助費用の自己負担問題、そして「なぜ禁止できないのか」という根本的な議論に火がついた。

今回の事故の概要
2026年4月6日、閉山中の富士山・富士宮口新7合目付近でポーランド国籍の男性(31歳)が滑落しヘリで救助された。その際の証言から「前を歩いていた日本人男性も滑落した」ことが判明。捜索の結果、4月9日に宝永第1火口付近で30代とみられる日本人男性が心肺停止の状態で発見された。

事故発生──ポーランド人男性の証言で発覚

日本人男性の遭難は、先に救助されたポーランド人男性の証言によって初めて発覚した。もし証言がなければ、そのまま誰にも気づかれず行方不明のままだった可能性もある。

事故前日の4月5日、富士山頂の最低気温は氷点下9.3度、最高気温でも氷点下0.3度だった。「桜の季節だから暖かいだろう」は命取りの誤解で、春先は雪が緩み始めることで雪崩・滑落のリスクがむしろ高まる。静岡県側だけでこの5年間の閉山期に48人が遭難し、うち12人が死亡(4人に1人)という統計がある。

富士宮市長「考え方がずるい」

事故を受け、静岡県富士宮市の須藤秀忠市長(79)が怒りのコメントを発表した。「あっちは勝手に登りたいと言っても、こっちは責任上・人道上、どうしても助けなきゃならない」と述べ、防災ヘリ救助費用の遭難者自己負担化を改めて県・国に要望していくと明言した。

須藤市長の「遭難者自己負担」発言はこれが初めてではない。2025年5月にも同様の主張をしており、静岡県知事は「救難救助は法律上無償。国全体の問題として国に検討してもらうべき」と述べている。なお、埼玉県はすでに条例でヘリ山岳救助を有料とする先行事例がある。ヘリを使った捜索費用は1時間あたり約50万円とも言われ、数日にわたれば総額は数百万円規模になる。

この話題で思い出す人が続出──2019年ニコ生配信滑落死亡事故

2019年10月、閉山後の富士山でニコニコ生放送をしながら単独登山していた47歳の男性が、山頂付近から滑落して死亡した事故のこと。リアルタイム配信中に滑落する瞬間が映り、視聴者の通報で捜索が始まった。遺体が発見されたのは2日後だった。当時も「閉山期の危険性」が広く議論されたが、その後も同様の事故は繰り返されている。

「怖すぎる」──冬富士を知る人たちの声

厳冬期の富士山は、ヒマラヤ遠征隊が本番前の訓練場として使うほどの極地的環境だ。独立峰ゆえに遮るものがなく、山頂付近では風速50m超の暴風が吹くことも珍しくない。アイスバーンになった斜面はアイゼンの刃もほとんど刺さらず、滑落すれば数百〜千メートル以上止まらないケースもある。「日本一の山」というブランドイメージとその実態の落差が、毎年命を奪い続けている。

「保険未加入なら自己負担に」──具体的な提案も

なぜ禁止できないのか──「登山権」という厄介な問題

「禁止すればいい」という声は多いが、現実はそう単純ではない。富士山の登山道は道路法上の「道路」にあたり、冬季閉鎖中の登山道への立ち入りは同法第46条違反となる可能性がある(6ヶ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。ただしこれはあくまで「指定された登山道」の話だ。

問題の核心は、登山道以外からの入山を禁じる法律が存在しないことにある。山そのものへの立ち入りを禁止するためには、国有地・民有地の権利関係、憲法上の移動の自由、そして登山者が長年主張してきた「登山の自由(登山権)」との整合性を整理した上で、新たな立法措置が必要になる。さらに富士山は8合目より上が富士山本宮浅間大社の私有地という事情も話を複雑にしている。「禁止してほしい」という市民感情と「禁止する法的手段がない」という現実の溝は、いまも埋まっていない。

余談
この問題を一躍広く知らしめたのが、2025年4月に起きた「同一人物による5日間での2度の遭難」だ。閉山中の富士山で滑落して救助された中国籍の男子大学生(27歳)が、4日後に再び入山して体調不良で再救助された。2度目の入山理由が「山頂に携帯電話を置き忘れたので取りに行った」というものだったため、Xは「携帯より命の方が大事」「それ、新品で買い直せたのでは」という声であふれた。ヘリ救助は1時間あたり約50万円とも言われ、2度の出動費用を合算すると最新スマートフォンが何十台も買える計算になる。笑えない話だが、笑ってしまった人が多かったのも事実だ。

野口健氏「この議論を真剣に始めた方がいい」

アルピニストの野口健氏は、閉山期入山問題の「法的根拠のなさ」という本質を長年指摘し続けている。感情論でも外国人叩きでもなく、仕組みとして解決しなければ同じことが繰り返されるという指摘は重い。

まとめ
  • 2026年4月6日、閉山中の富士山で滑落事故が相次ぎ、30代の日本人男性が宝永火口付近で心肺停止で発見された
  • 富士宮市・須藤市長が「考え方がずるい」と怒りのコメント。ヘリ救助費用の遭難者負担化を改めて要望した
  • 閉山期の登山道立ち入りは道路法で違反となる可能性があるが、山全体の入山禁止には法的根拠がない
  • 厳冬期富士山はヒマラヤ遠征隊も訓練に使う極地的環境。「日本一の山」というイメージとの落差が命を奪い続けている
  • 「禁止してほしい」という感情と「禁止できない」という法的現実の溝を埋めるには、立法措置しかない
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